No.01【前編】|Mrs.Morrisの服づくり
イギリスが誇る近代デザインの父、ウィリアム・モリス(1834-1896)。
彼の美意識に共感し、そのデザインを日々の暮らしに取り入れる人がいます。
イギリスの自然を巧みに織り込んだモリスのデザインが、
洋室だけでなく、和室にも似合う不思議。
様々なかたちでモリスデザインが活かされた生活を覗いてみることで、
あなたのお部屋にも取り入れられるヒントが見つかるかも。
With Morris ―― モリスと共に暮らす人々の物語を紐解いてみましょう。
目次
【前編】
1.《ピンパーネル》が呼び込んだチャンス
2.名作から生まれたMrs.Morris
【後編】
3.柄に敬意を、工夫はひとさじ
4.山梨へ、イギリスへ、広がる世界
《ピンパーネル》が呼び込んだチャンス
ビクトリアンクラフト:
本日はよろしくお願いします。
当店ではモリスデザインを使った家具をはじめ、
雑貨やカーテンなども販売しているのですが、
服飾品は扱っていません。
それで、先日インスタグラムでMrs.Morris(ミセス・モリス)さんのお作りになっている
モリスのデザインを使ったドレスを拝見したときに一目惚れしてしまって……
もっとMrs.Morrisさんについて知りたいなと思い、
今回インタビューをお願いしました。
まずは、服作りをはじめられたきっかけについて
教えていただけますでしょうか?
Mrs.Morris:
ありがとうございます。
服づくりを始めたのは2021年、
娘が保育園に入って、
私一人の時間が持てるようになったんです。
余裕ができたら
娘の服を作りたいと思っていたので、
それで久々に作ってみたんですね。
ビクトリアンクラフト:
久々ということは、以前から
服をお作りになられていたんですか?
Mrs.Morris:
小さいころから物をつくることは好きで、服も好きでした。
中学生の頃、ブライスドールの服を自分で作って、
ネットで販売したりとか……
私の地元は愛知なんですが、
生地の産地で、昔からお針子さんを養成するような
学校も多かったんです。
それで服飾科のある高校に進学して、
そこでいろいろ叩き込まれましたね 笑
それから就職してアパレルの販売をしたりと、
服へのこだわりは強いんです。
なので、Mrs.Morrisをはじめるにあたっての
明確なビジョンはありました。
ビクトリアンクラフト:
趣味で作っていた服を販売するようになった
きっかけはなんだったんでしょう?
Mrs.Morris:
インスタグラムのおかげですね。
娘用と自分用にモリスの生地を使ったドレスを作って、
個人のアカウントでアップしていました。
それで、たぶん4~5着目くらいに作った
《ピンパーネル》柄のドレスがすごく反響をいただいて……
アップした途端、何十人もの方から
「これは買えますか?」とDMが届いたんです。
自分のなかでも「服作りがいつか仕事になればいいな」という
気持ちはありましたが、
思いがけないチャンスに
「これはやるしかない」と決めました。
ビクトリアンクラフト:
きっかけになった《ピンパーネル》のドレスは
どのくらいお作りになったんですか?
Mrs.Morris:
全部で50着くらいですね。
まとまった数を作りたかったので、
そのドレスは工場で縫製してもらいました。
まず35着ほど作ってインスタグラムで販売したら、
なんと1分ほどで売り切れてしまって。
フォロワーも毎日500人ほど増えて、
翌月には追加販売もしましたね。
ほんとうに、SNSのある時代ならではの
体験だったなと……
今では、新作のドレスはサイズ調整を承っているので
自分で縫製しています。
名作から生まれたMrs.Morris
ビクトリアンクラフト:
ものづくりに関して、
ご家族など周りからの影響はありました?
Mrs.Morris:
映画好きな両親からの影響で、
幼い頃から『赤毛のアン』、『風と共に去りぬ』など、
いろいろな作品を一緒に見ていました。
そういうところから
私の世界観やスタイルのベースが
作られているというのはあるかもしれません。
ビクトリアンクラフト:
なるほど……Mrs.Morrisさんの作品を見ていて、
まさに『赤毛のアン』や『不思議の国のアリス』のような
「少女性」がひとつのキーワードになるのではないかと
感じていたんですが、
少し納得しました。
今でも映画からインスピレーションを
得ることはありますか?
Mrs.Morris:
かなりありますね。
例えば、クラシカルなデザインを
参考にしようと思うと、
本だと専門書を探さないと
いけないんですが、
映画やドラマなら
比較的簡単に見ることができます。
『ジェーン・エア』とか
『ダウントン・アビー』とか……
次から次に美しいドレスが出てきますよね。
ビクトリアンクラフト:
『ダウントン・アビー』!
私もハマっていました。
シナリオはもちろんのこと、
登場人物の服装も素敵ですし、
仕事柄、調度品や部屋の
コーディネートなどにも目が行ってしまって……笑。
映像だと、服の立体感や
たなびきなどもリアルに感じられますもんね。
Mrs.Morris:
そうなんです。
本のイラストより、
構造なども断然分かりやすいですからね。
私の作っているモリスのデザインを使った
ドレスは柄に存在感があるので、
シルエットはシンプルに
するようにしています。
ただ、それでも人とは被らず、
そこに少女っぽいエッセンスを
加えながらデザインしていますね。
ビクトリアンクラフト:
モリスのデザインを使った
ドレスの仕立て屋さん……
それで「Mrs.Morris」という名前は
とても印象的です。
Mrs.Morris:
自分でも大胆な名前を
付けたなと思っています笑
ブランド名の由来としては、
『赤毛のアン』にミス・ラベンダーという
女性が登場するんですが、
「ミスってかわいいかも」と思って。
ただ、ミスよりミセス(夫人)の方が
つくりたい服のイメージにも合っていたのと、
私自身、結婚しているのでミスではないんですね。
考えた末に、ウィリアム・モリスの美意識を
受け継ぐ気持ちを込めて「Mrs.Morrisにしよう」と
決めました。
『美しいと思わないものを家の中に置いてはいけない』という
モリスの言葉がありますが、
服づくりもそれにならいたいと思っています。
悩んだときは「もしモリス本人だったら、ここは妥協せずに突き詰めたんじゃないか」と
価値観の軸になっていますね。
《プロフィール》
Mrs.Morris (ミセスモリス)
2022年、ブランド設立
ウィリアム・モリスのファブリックを使ったレディース服やバッグを製作、販売
シーズン毎にInstagramにて新作ドレスのオーダー会を実施
Mrs.Morris公式インスタグラムアカウント
@Mrs.Morris
【後編】に続きます!
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